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執筆者の写真油井和徳

人に迷惑をかけたくない

今回は、優しい笑顔が印象的な金沢さん(仮名)にお話をお伺いしました。

※写真左が金沢さん

金沢さんは昭和22年生まれの74歳。

姉2人、妹1人の4人きょうだいだったこともあり、子どものころは男の子と遊ぶよりも女の子の中に交じって遊ぶことが多かったといいます。そんなこともあって、「自分で言うことではないけれど、優しい性格に育った」と金沢さんは話しました。


就職について考えだしたころ、お姉さんの旦那さんが塗装業を営んでいたこともあり、「手に職をつけるためにも、塗装の仕事をしないか」と誘われ、塗装の仕事を始めました。塗装の仕事に慣れてきたころ、“もっと大きな会社で働きたい”と思い、より規模の大きい塗装会社で働き始めるなど、塗装の会社を転々とする日々を過ごします。「塗装の仕事はどうでしたか?」と聞いたところ、「大変だったけど、楽しかった。資格とかがあるわけではないけれど、手に職をつけられたことはよかった。」と答えてくれました。


40歳手前で結婚。しかし、奥さんの持病が悪化し、一緒に生活できる期間はほとんどなかったといいます。


50歳をすぎたころ、石川県を出て東京で仕事がしたいと思い始めます。まわりは大阪など関西方面へ行く人が多かったそうですが、金沢さんは東京での仕事に憧れ、今から20年ほど前、54歳の時に上京します。


上京後、仕事を探していると、山谷という街で“手配師”と呼ばれる人たちによる仕事のあっせんがあることを知ります。さっそく山谷に向かうと、手配師から建設の仕事を紹介されました。以降、手配師のあっせんのもと、各地の建設会社での泊まり込みの仕事をするようになります。


そんな中、栃木の建設会社で仕事をしていた金沢さんは、夏の暑い時期にふらふらするなど熱中症のような症状が出たり、周りの人たちの仕事のペースについていけなかったりということ増えてきたと思うようになりました。自身の体力の衰えを感じたと同時に、周りにこれ以上迷惑をかけることはできないと思った金沢さんは、建設の仕事をあきらめ、知り合いの会社で清掃の仕事を始めます。


学校やオフィスでの清掃を始めた金沢さんでしたが、ある時、清掃中に階段から落ちで腰を強打してしまいます。ケガをしたことで清掃会社に迷惑をかけてしまったと感じた金沢さんは、清掃会社を辞めてしまいます。



仕事がなくなった金沢さんは、上野付近で仕事探しをはじめます。しばらく歩いて探し回っていると、足の不調を感じたため、まわりの人たちの情報をもとに山友会のクリニックを受診します。クリニック受診後、相談室のスタッフと生活の相談をしている中で、「生活保護を申請してみてはどうか?」との話を受けた金沢さんは、悩んだ末、生活保護の申請をすることを決意します。

「東京出身ではない私に、山友会も役所の人も優しく接してくれた」と、当時を振り返って話しました。


現在は生活保護を受給しながら、ドヤで生活をしている金沢さん。

足の調子も良くなっており、歩けるうちは歩きたいとのことで、毎日散歩に出かけているそうです。部屋の中でずっと寝ているような生活をしてはいけないと、規則正しい生活を送るよう心がけていると言います。ドヤは狭く、1人の時間が増えることで孤独を感じる方が多いため、外に出て散歩をするというのは良いことなのかもしれません。


山友会について、「ここに来たことで生活が安定した。私の話も親身になって聞いてくれるので、とても感謝している」と話してくれました。しかし、このままお世話になり続けていいのだろうか。迷惑にならないだろうかと考えることもあるという金沢さん。“まわりに迷惑はかけたくない”という考えが強いことが伝わってきます。


家族とも疎遠になり、何十年も連絡が取っていないという金沢さん。「今の自分の状況を知ったら、家族が心配する。迷惑をかけることにもなってしまうので、こちらから連絡はしないほうがいい」と思っていたため、苦しい時でも連絡はしなかったといいます。


インタビュー中、「迷惑をかけたくない」という言葉を何度も話した金沢さん。苦しい状況になっても、”周りに迷惑をかけない”ということを意識してしまうそうです。金沢さんのように、山友会を訪れる方の中には、「役所の世話になりたくない」「まだ1人で生活できているので大丈夫」と話す方が多くいます。気軽に相談できる・話ができる「山友会」という場所がおじさんたちにとって大きな存在であることを改めて実感しました。



インタビュー・記事作成

広報支援チームやまともボランティア

植田裕太



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